完成されたデザインとはこのことだと思います。
どこで見たのか、というはっきりとした記憶はありません。ただ確実に見たこと・使ったことがあり、記憶に「しょうゆ=これ」と刷り込まれている商品があります。キッコーマンさんの「特選丸大豆醤油 卓上びん」です。
あぁ!と思う方きっといらっしゃると思います。使ったことありますよね!? ねっ!?
ただ一般家庭よりも、食堂やレストランで見たような、薄ぼんやりとした記憶しかありません。
先日、そういえばキッコーマンさんの瓶入りのしょうゆがあった!と思い出し、スーパーを回って探しました。なかなか売ってないですね。
特選丸大豆醤油 卓上びん
1961年(昭和36年)に発売され、2018年4月までに累計5億本以上が販売されているロングセラー商品です。
日本のみならず、海外でも販売されていますよ。
しょうゆ自体の商品名としては、「キッコーマン 特選丸大豆しょうゆ」です。その中の内容量が150mlで容器が瓶のものです。
こちらの瓶自体のことは、「しょうゆ卓上びん」と言うみたいですね。
高さは13.2か3cmくらいで、価格は217円(税抜)でした。
いやー本当に素敵なデザインですね。可愛いという形容が正しいのか分かりませんが、私の中では可愛い。
世の中には沢山の商品があって、その中には優れた商業デザイン・工業デザインであるものもあります。
例えばなんでしょうね、ピースの缶とか。あとは、コカ・コーラやセブンイレブンのロゴとかもそうでしょうかね?
--- ロゴは商業デザインに入りますか!?
その優れたデザインの中に確実に入ると思うのが、しょうゆ卓上びんです。
私はデザインのことに関してはド素人ですけれども、完成されたデザインってこういう商品のことを言うんだろうな、と思います。
しょうゆ卓上びんの買えるところ
実店舗
スーパーに売っていますが、数は少ないようですね。Amazonの口コミでも、お店ではなかなか見つからないと書いてありました。
今はボトルタイプが主流のようです。
私はスーパーを6店回り、そのうち1店で見つけました。探し始めてから数日で見つかったので、早い方です。
インターネット
Amazon・楽天・Yahoo!ショッピング・Wowma等で購入可能です。店頭でなかなか見つけられない商品を買う時はネットが便利ですね。
しょうゆ卓上びんの歴史
そもそもキッコーマン
キッコーマンさんの歴史は古く、しょうゆ作りが始まったのは江戸時代の初期だそうです。
場所は現在の千葉県野田市です。しょうゆの原料である良質な大豆や小麦、江戸湾の塩などの確保に最適の土地だったそうです。
キッコーマンさんの前身である野田醤油株式会社さんが設立したのは1917年(大正6年)です。
しょうゆ醸造家一族が合同で設立しました。
1940年までには、しょうゆの商標も「キッコーマン」に統一されたそうです。
現在のキッコーマン株式会社となったのは1980年(昭和55年)です。
相変わらずのつまみ食い情報なので、詳しくは下記の記事をご参照くださいませ。
*キッコーマン しょうゆ卓上びん|COMZINE by nttコムウェア
しょうゆ卓上びんの誕生
受け皿なしで使えるしょうゆ差しを
昭和20年代後半、キッコーマンは、消費者の間で高まっていた小容量容器での販売を
希望する声を受け、卓上びんの開発に着手する。
当時、各家庭では、買ってきたしょうゆを小さなしょうゆ差しに移し替えて使っていたが、
注ぐたびにしょうゆが垂れ、容器やテーブルを汚す。
そのため、しょうゆ差しには受け皿が添えられていることが多かった。
*キッコーマン しょうゆ卓上びん|COMZINE by nttコムウェア
受け皿なしで使えるしょうゆ差しを食卓へ届けるため、合成樹脂のキャップを使用した卓上びん、ヒナ鳥型卓上びんなどを制作しました。
これらは市販されることはなく、宣伝用に配布されたそうです。
1953年(昭和33年)には「卓上びん150cc」が販売されました。液垂れが随分解消された商品だったそうです。
「しょうゆ卓上びん」の誕生
卓上びん150ccは好評を得ましたが、キッコーマンさんはさらに研究を続けます。
当時開発担当だったのは、企画宣伝課の吉田さんという方です。
吉田は最初から新しい卓上びんの開発は、容器メーカーではなく、
デザイナーに依頼することを決めていたと言う。
コンセプトは、売るための容器ではなく、お皿や茶碗と同じように食卓で使える什器だ。
*キッコーマン しょうゆ卓上びん|COMZINE by nttコムウェア
なるほどなるほど。
そしてデザインを依頼したのが、榮久庵憲司(えくあん けんじ)さんでした。
吉田さんも榮久庵さんも当時まだ20代という、お若い二人のコラボレーションが現在まで続くロングセラー商品である、しょうゆ卓上びんを完成させました。
1961年(昭和36年)に発売されてから、「液垂れしない・持ちやすい・倒れにくい」という機能性と、高いデザイン性で大ヒット商品となりました。
しょうゆ=キッコーマンというイメージを持つ方は多いと思います。多くの方がそのイメージを持つきっかけとなった商品です。
細部まで計算されたデザイン
卓上びんはラッパのように底が広く、首が細い設計になっています。安定感がありますし、食卓に馴染むデザインになっています。
ガラスという素材で作ったのも、当時は新しかったようですね。透明なガラスですから、しょうゆの残量も一目で分かります。
消費者はしょうゆ卓上びんを使う時に、細かいところまでそんなに意識をしないで使いますが、しょうゆ卓上びんは計算しつくされたデザインでした。
特に卓上びんを持つ時の首の細さが象徴的です。こちらも計算された細さでした。
榮久庵は、首の細さについて「首をもって注ぐ時、女性の手の大きさだと、小指が上がり、
美しい手のカタチになります。しょうゆを注ぐ時の手が非常にきれいに見えるんです」。
置いた時だけではない、道具として使う時も美しいこと、そこまで配慮したデザインだと言う。
*キッコーマン しょうゆ卓上びん|COMZINE by nttコムウェア
実際に持ってみました。親指・人差し指・中指で持て、薬瓶・小指は飾りのような形になります。
ここまで計算されているとは、デザイナーさん恐るべし。
実は、しょうゆ卓上びんのことを調べるまで、恥ずかしながら榮久庵さんのお名前を知りませんでした。
2015年にお亡くなりになっているそうですが、工業デザインの草分け的存在であり、第一人者の方だったのですね。
グッドデザイン賞、そして立体商標登録
しょうゆ卓上びんは、発売から現在まで、その姿はほぼ変わっていません。びんに印刷される文言が変わったくらいです。
その高い機能性とデザイン性で、1993年(平成5年)にはグッドデザイン賞を受賞しています。
翌年に「キッコーマン 特選丸大豆しょうゆ」として新発売されました。中身が変わっただけでしょうかね?
2005年(平成17年)には、ニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品に選ばれています。
すご…。
そして昨年の2018年(平成30年)には、立体商標として登録されました。
登録された「立体商標」には、立体物に文字やロゴなどの図形が印刷されているものが多く存在しますが、このたびの“しょうゆ卓上びん”については、文字や図形が表示されていない食品容器として登録された、数少ない事例になります。
つまり、ロゴや文字が印刷されていなくても、容器をひと目見ただけで、“キッコーマンの卓上びん”と認識できることが公的に認められたことになります。
*キッコーマン“しょうゆ卓上びん”が「立体商標」登録!~ロゴや文字がなくても、ひと目見ただけで“キッコーマンの卓上びん”とわかる~ | キッコーマン
ロゴや商品名が印刷されていない状態の卓上びんを持って、「これはなんでしょう?」と街頭インタビューしても、おそらくほとんどの方が「キッコーマンのしょうゆ」と答えられそうです。
おわりのつぶやき
しょうゆ卓上びんは、2018年に累計4億本を出荷しました。5億本、6億本と増えていって欲しいなと思います。
現在は店頭で販売しているスーパーが少数派なので、使うかどうか非常に迷っているところでもあります。
今ブルームのしょうゆ差しを使っているので、それと平行して使うか、うーん迷いますね。
もう開き直って、ニューヨーク近代美術館のように飾り続けるもの良いかなと思います。
商品情報
商品名:キッコーマン 特選丸大豆しょうゆ 150ml びん
名称:こいくちしょうゆ(本醸造)
内容量:150ml
販売者:キッコーマン食品株式会社
製造所:キッコーマンフードテック株式会社
希望小売価格(税抜):224円
購入価格(税抜):217円
JANコード:49645255